Pがきえた

作: Hiroki ITO, 校正: Mikiyasu KOBAYASHI

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茜「すまない、桜。プリンを食べてしまったのは私だ」

皆が回答を書き終え、ペンを置いたところで会長が言った

そう、今回の事件、犯人は会長だったのだ

他の皆は回答用紙になんと記入したのだろうか?

ーーー

姫花「私は当たったぞ」

瑠璃「私も分かったわ♪」

流石というべきか、山吹と朝比奈さんは犯人を当てたようだ

桜「私は、その……犯人は駿、って書いちゃった」

ホントに俺のこと疑ってたのかよ!

お兄ちゃん、カナシイよ……

姫花「駿はなんと書いたのだ?」

駿「俺も、犯人は会長、と書きましたよ」

胸を張って答える

姫花「それじゃ、私と駿、それに朝比奈さんで推理を確認して行くとしますか」

瑠璃「えぇ、そうね♪」

姫花「駿、お主が犯人を会長と推理した理由はなんだ?」

駿「そうだな、桜がプリンを冷蔵庫に入れたのが今日だ、ということについて会長が確認したときかな」

あのとき、会長はこう言った

<<<回想開始

茜「んっ? ちょっと待て。確認するが、プリンを冷蔵庫に入れたのは、今日なのか?」

桜「そうですが……何か気になる点でも?」

茜「いや、続けてくれ」

<<<回想終了

瑠璃「そうね、私もそれが気になったわ」

姫花「うむ、この一言が無ければ、駿には分からなかったかも知れないな」

確かにそうだ

駿「俺にはそれ以外、これといった根拠は無いんだ」

瑠璃「私と姫ちゃんは、自分が犯人じゃないて分かってるから絞りやすかったけどね♪」

なるほど。だが俺と桜が疑われていた件についてはどうなんだ?

姫花「結論に至った確実な理由というわけではないが、」

姫花「桜の自作自演にしては仕込みが薄っぺらいと思った」

瑠璃「それに私は駿くんが犯人じゃないって始めから信じていたもの」

駿「朝比奈さんっ! 俺も朝比奈さんが犯人じゃないって最初から信じてましたよ!」

瑠璃「だって自分が犯人なのに探偵役を買って出るなんて、駿くんにそんな度胸あるわけないもの♪」

そっちですか……

姫花「私も同感ですね」

まぁそうだろうね

姫花「あとは、『冷蔵庫を開けたか?』という質問に対する証言も判断材料になった」

姫花「朝比奈さんは確か、『飲み物を取り出した』と言ってましたよね」

瑠璃「そうね」

姫花「飲み物はドアポケットに入れてあります。それに第一、既に入っていた飲み物を"取り出した"だけです」

瑠璃「対してあーちゃんは、新たに物を入れているものね♪」

駿「あぁ、なるほど、そうですね」

それも会長が犯人であるという推測に至る情報の一つではあった

姫花「開封していない袋入りのチョコがあったことを考えれば、冷蔵庫を開けてチョコを入れたという会長の証言は真実らしい」

姫花「そうなると、ある程度ものが詰まっていた冷蔵庫に、買って来たチョコの袋を入れるのには多少の努力がいったはず」

瑠璃「そう、そのためにあーちゃんは恐らく、冷蔵庫の中に不要な品が入っていないか確認したはずよ」

駿「そして桜が入れたプリンを見つけた、と」

その時に会長が山吹のカエルタッパを開けなくてよかったと思う

桜「でもでも、なんでそれを食べちゃったんですか? 会長が勝手に人のもの食べるなんてこと」

そう、それが今回の事件で一番の問題点なのだ

この5人の中で、誰かが誰かに悪意を持って行動するということは考えにくいし考えたく無い

となれば、食べてしまった、あるいは食べてもいいと判断した、というのが犯行理由だろう

ではその理由とは何か

駿「それはだな、プリンの賞味期限が切れていた、という理由だと思う。違いますか、会長?」

ーーー

茜「あぁ、その通りだ」

茜「冷蔵庫を開けたらものが一杯でな、チョコレートを入れるための場所を作ろうと思ったんだ」

茜「そうしたら、賞味期限が昨日のプリンがあるじゃないか」

茜「それで、食べ物を粗末にするのはよくないと思い、食べてしまったというわけだ」

よかった。動機も俺の考えた通りだった

茜「しかし、プリンは今日持って来たんだろ? なぜ賞味期限の切れたものを……」

桜「えっ、でもでも、買ったのは昨日ですよ?」

茜「えっ!?」

駿「そういうことです、会長」

駿「ラ・プレヌ・リュンヌのプリンは手作り。そしてカップもきちんと密閉されてはいない」

駿「それに、やはり作り立ての方が美味しい」

駿「だから大抵の洋菓子は、賞味期限を、販売日か長くてもその翌日程度にしているんですよ」

今回の場合で言えば、プリンの賞味期限は桜が買ったその日、つまり昨日であった

桜「確かにそうだけど。当日に食べないことなんてけっこうあるんじゃ……」

姫花「そうだ。だがもし、いつ買ったのか分からないプリンが冷蔵庫にあって賞味期限が切れいていたとすれば?」

駿「そう、ラ・プレヌ・リュンヌの新作プリン、と聞いてすぐ反応した山吹と朝比奈さんなら、カップを見てそのプリンがそう古いものではないと分かるだろう」

ちなみに俺もそんなに詳しいわけではないが、桜の御機嫌を取るために洋菓子を買いに行くことも稀にある

駿「それに気付かず、プリンが長いこと放置されていたものだと勘違いして食べてしまったとすれば……」

駿「スイーツにあまり関心が無い会長、ということになる」