少し前に、「山形で食べたもの | Mizukama Blog」という記事を書いたが、私には山形に赴いた際、食べたいと思ったのに食べられなかったものがあった。「つや姫」というブランド米である。3月末に山形入りした時、新幹線の窓から見える田園風景の中に、「つや姫」と書かれた大きな看板が立っているのを見つけて、旅程のかなり初期から気になっていたのであるが、私は「つや姫」というブランド名を知らなかったので、これは何かエロいものではなかろうか、などと考えていた。その勘違いは山形駅に到着してすぐ解消される。駅の土産物コーナーでも「つや姫」を売っているからだ。おまけに私が参加した学会の口頭発表でも、地元山形大学の発表者からは「つや姫」の生産に関わる害虫対策の研究報告などがなされ、山形県が「つや姫」なるブランド米に力を入れている様子を窺い知ることができた。
ところが、「つや姫」を食べる機会は3泊4日の日程中、1度も訪れなかった。飲食店でそれと知らずに食べた可能性はあるが、少なくとも「つや姫」の使用を掲げた店ではなかったのである。学会懇親会に至っては、米が全く提供されなかったように記憶している。私の中で山形県の美味いものと言えば、牛肉、さくらんぼ、米である。さくらんぼは時期が違うから無理、牛肉は高価なのでそんなに出せない (懇親会では少しだけ出た)、というのは仕方ないが、それなら山形自慢の米を出してくれと思った。炊きたての白米に、あとは適当な漬物でもあれば十分である。日本中どこでも食べられるようなホテル料理のカルパッチョやらサンドウィッチなどよりずっとマシでしかも多分安上がりである。
そんなこんなで山形でアピールされている「つや姫」を食べる機会が無かったものの、京都に戻ってからも気になっていた私は、近くの米屋で「つや姫」を取り扱っているところは無いかと探し、買いに行くこととした。
取扱店・提供店・生産者情報:「つや姫取扱協力店」と「つや姫提供店」のご紹介
「つや姫」の公式サイトでは、上記のページで取扱店の一覧を掲載している。執筆時点で京都には24の取扱店があるようであるが、ちょうど私が通う大学の近辺に取扱店があるようなので、そこへ買いに行ってみた。私が普段買いに行っている米屋は別にあり、今回行くところは初めてだったので少し緊張したが、店のおばちゃんに「つや姫、置いてますか」と尋ねると、「ちょうど今日、精米したところだよ」と言って出してくれた。値段は5kgが2780円だったと思う。
さて、米というものは日本人にとっての主食であり、ほとんど料理をしない大学生でも米だけは自分で炊く、という人は多いのであるが、米の値段に対する感覚は人それぞれである。「安い米」と言ったときに、私の場合は有名産地ではないところのブランド銘柄 (「コシヒカリ」「あきたこまち」等)の相場である4000円/白米10kgを下回っている米を思い浮かべるが、3000円/白米10kg以下でないと安いとは思わない人もいる。そんな中で、白米5kgが2780円というのは間違いなく高い部類に入ると言っていいだろう。
農林水産省/米の相対取引価格・数量、契約・販売状況、民間在庫の推移等
農林水産省のデータによると、平成26年度の産地・銘柄別相対取引価格 (平成27年3月の速報)では、山形県産「つや姫」玄米60kgの価格は16805円である。なんと、リストにある中では、高級米の代名詞とも言える新潟県魚沼産コシヒカリの19374円に続く2位であり (だいぶ差はあるが)、魚沼産以外の新潟県産コシヒカリの16000円弱を上回っている (特殊な栽培方法などにより少量生産されるものについてはリストに含まれていないため、これより高価な米が存在しないというわけではない)。ちなみに私が普段食べている、福井県や滋賀県産のコシヒカリは、12700円前後である。
購入時の描写に戻ると、予想していたよりも若干高い値段に一瞬たじろいだ私であったが、出せない金額ではなかったので、そのまま白米5kgを購入した。早速下宿の炊飯器にセットし、しっかり水に漬ける時間もとって炊いてみた。食べてみると確かに旨い。一粒一粒がしっかりしているように思う。香りも良い。米の味は季節やその年の出来というのもあるし、炊飯器やセットした水の量にも影響を受けるため、他のブランド米と比べて評価することは出来ないが (魚沼産コシヒカリも過去に食べたことはあるが、よく覚えていない)、少なくとも私が普段食べているものよりは旨いと思った。常食するには高価だが、人を招いた際に出せば感銘を与えられる程度の価値はあると思う。
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