こうして技術は失われる

「道具を自在に操れる者こそ、真の男を名乗るに相応しい」

と私は思っている。いや、別に男性だろうが女性だろうが関係ないのだが、仕事場でも家庭でも、自分が使う道具を思い通りに操れない人間というのは、つまり道具を使いこなせていないわけで、となるとその道具に対する適切な評価も出来ないし、その道具を使うことによって十分な満足感を得ることも出来ないのだ。あぁ、なんと悲しい人生だろう!

 さて、私はテレビを観るのにこれまで3年ほどtorneを使っている。一年と少し前にnasneが発売されてからは、PS3専用地デジチューナとnasneの2台体制だ。PS3とPS VITAから視聴している。基本的にテレビは録画してからしか観ないので、番組の途中でCMが来ると30秒スキップと15秒バックのボタン操作を使い、本編の続きを観るようにしていた。

 そんなことを3年間もやっていると上達するのが、このスキップ&バックの操作である。

 基本的にCMの間隔というのは、番組ごとに、またCMの場所(アニメで言えば、OPとAパートの間、等)によってほぼ決まっている。私が観ているアニメだと、多くが60秒分のCMを挟むので、その場合は30秒スキップを2回、ノイタミナ枠はCMが長いので4あるいは5回、といった具合である。中には30の倍数でない秒数のCM枠長の番組もあり、その場合は15秒バック等を使い調整することになる。アニメ作品の中にはOPとAパートの間にCMを挟むもの、挟まないものなどあり、この構成を覚えて的確にスキップ&バックを行わなければ、快適なCMスキップは行えなかったのである。さらに言えば、nasneの場合、PS3専用地デジチューナで録画したものを観るのと異なり(外付けHDDに保存していてそのHDDの読み込みが非常に遅ければnasneと同じ挙動になる可能性はあるが)、CMが開始した時点で30秒スキップを連打しても、押した回数だけスキップされるわけではない。私の環境では確実に反映されるのがどうやら2回までである。こういった挙動を把握し、操作に熟練してこそ、素早くアニメを観ることが可能になっていたのである。私はこの操作において、ずいぶん熟練していると自負しており、またその操作を完璧に行うことで快感を得ていたのである。

 ところが、2013年12月12日、nasneシステムソフトウェア ver.2.10でnasneにおける「チャプター自動生成機能」が追加された。

 「チャプター自動生成機能」などと濁してはいるが、要するにCMとそうじゃないとこを判別してスキップするのに使える機能である。確かに使ってみると、100%とまではいかないものの、CMと本編の区切りにチャプターが生成され、簡単にCMをスキップできるようになっている。これまでnasneに録画された番組を視聴する場合、CMをスキップする際には30秒スキップを連打しなければならず、それも反映の遅延を見極めつつ、何回かに分けて押す必要性があったわけだが、それが左スティックを軽く右に倒すだけで一発、ということになったのである。

 確かに便利であるし、特に無線で接続するPS VITAからの視聴の場合には多いに助かる機能であるのだが、これまでの人生で習得した技術の価値が下がるのは、少し寂しい気分になった。

 ちなみに、PS3専用地デジチューナーで録画した番組にチャプター自動生成を行う機能は今のところ無いし、どうやらPS3の能力的に(他のゲームなどが動いていると)厳しいらしく、この私の習得した技術が全く無意味になるということは今のところない。

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