ちょっと前に、どこかの高校野球部で部室から火が出て、調べてみたら部員がタバコを吸っていたことが判明し、その高校は勝ち進んでいた甲子園予選を辞退した、というニュースがあった。私は高校野球に大して興味がないので、どうでもいいちゃどうでもいい話なのだが、以前読んだ重松清の「熱球」に加え、自分自身の高校時代にあった出来事を思い出したので、それを書こうと思う。
私の通っていた高校の校舎には、私が所属していた普通科の高校とは別に、通信制の高校が入っていて、土日は通信制の方が校舎を利用するため、教科書や辞書などを教室の机の中に置きっぱなしにできない、という制約があった。そのため金曜日の放課後になると、普通科の生徒たちは家に持ち帰りたくない教材等を部室に置いて、月曜の朝にそれを回収して机に戻す、ということを行っていた。事が起きたのは私が3年生の夏休みで、水泳部を引退した後のことであったが、引退後も上記の理由により部室を荷物置き場として利用していたため、私も水泳部の部室にはちょくちょく訪れていた。
その日、学校の夏期講習 (補習ではない!)に参加した後、私が水泳部男子の部室 (女子の部室は別にある)へ荷物を取りに行くと、部室のドアに内側から鍵がかかっていた。普段外側はダイヤル式のシリンダー錠で施錠しているが、それは解錠されている。内鍵をかけることは滅多にないので、これはおかしいと思い (それと荷物が取り出せないのは困るので)、ドアを叩いて呼びかけたが、全く応答がない。部室棟の裏にまわってみると、曇りガラスの窓が閉めてあり中の様子が覗えない。時刻は昼過ぎで、部活動をやっている後輩たちは午前中に練習を終えたはずであるが、部室内で寝ているにしても、暑い中窓を閉めきってというのは変である。この不可解な状況に気味の悪さを覚えつつも、どうしようもないので部室棟から離れることにした。
離れる、と言っても私の好奇心はそのまま帰宅するなどということを許さなかったので、少し離れた場所から部室の入り口を監視することにした。裏手の窓には格子が嵌っているので、窓から逃げることは出来ない。であれば、いずれは正面のドアから出てくるのが道理である。ところが、5分10分と経過しても、一向に扉が開く気配がない。私はしびれを切らして再度ドアの前に立った。
すると、なんと内鍵が解錠されているではないか。開けてみると、中には1年生 (私の2つ下)の男子水泳部員が1人と、加えて同じく1年生の女子マネージャーがちょこんと座っていた。
「お前ら部室閉めきって何やっとんじゃー!」
と、今の私なら言いたくなるところだが、その時の私と後輩達との会話は、
私「(後輩女子マネ)さん、どうしたん?」
後輩女子マネ「練習中にちょっと気分が悪くなったんで、休憩してたんです。もう大丈夫です」
私「あ、そう。(後輩男子の方を見て)部室に内から鍵かけてなかったか?」
後輩男子「かけてないです」
私「あ、そう。じゃあね」
という感じだった。心の中では、
「ご休憩かよ!」
とか
「嘘ついてんじゃねぇよ! こちとらずっと入り口見張ってたんだからな!」
と思っていたが、口には出さなかった。1年生とは3ヶ月くらいしか一緒に部活動をしていなかったものの、部長であった私の目からは、その場にいた後輩男子部員が無理やりどうこうしたとは考えられなかったからだ。それにまぁ、下品な話になるが、部室内の臭いがどうこうということも無かったし、やってたとしてもせいぜいBまでだろ。
その後、お喋りな私はこの件を仲の良かった別の1年部員に話したりもしたが、大した反応もなく展開しなかった。あの日部室にいた後輩達は、どちらも美男美女というわけではなかったので、話題性も薄かったのだろう。私としても、2人がどういう関係かは正直どうでもよかった。しかしまぁ忘れがたいエピソードではあるし、恐らくあの2人も忘れてはいないだろうと思う。
Post a Comment