メクラチビゴミムシの研究者は要注意

 参加を予定している学会の発表要綱を読んでいて驚いたことがあるので記す。

応動昆第59回大会-山形大学 | 発表要綱 – [1]

 日本応用動物昆虫学会の大会では、昆虫に限らずダニや線虫の研究者も多く参加し、発表が行われる (イノシシに関する発表も見たことがある)。その応動昆の学会大会の発表要綱で次のように書かれているのだ。

「差別用語を含む昆虫和名などの使用は避けてください。」 – [1]より

 調べて見たところ、第54回大会から第58回大会のうち、56回大会と57回大会の発表要綱にも同様の記述が見られる。

応動昆第56回大会-近畿大学 | 発表要綱
応動昆第57回大会-日本大学 | 発表要綱

 「差別用語を含む昆虫和名」と聞いて、私がすぐに思い浮かべたのはメクラチビゴミムシである。メクラチビゴミムシの和名を巡る騒動については、Wikipediaにも記述がある。

メクラチビゴミムシ – Wikipedia

日本産昆虫学名和名辞書 DJI – [2]

 九大の検索システムを用いて調べたところ、オサムシ科の18属に合計233種の”メクラチビゴミムシ”を含む和名がヒットした。以下、科名、学名、種名のリストは[2]を用いて作成した。括弧内は和名内に存在する差別用語に該当すると思われる語句を示している。なお、種数には亜種の数が含まれる。

 メクラチビゴミムシ以外で「メクラ」を含む昆虫和名は、

Dytiscidae ゲンゴロウ科 (2種)
例: Morimotoa phreatica phreatica メクラゲンゴロウ (盲)

Formicidae アリ科 (3種)
例: Cryptopone sauteri メクラハリアリ (盲)

Tabanidae アブ科 (14種)
例: Chrysops basalis キゴシメクラアブ (盲)

がある。地中や洞穴で暮らす動物の中には目が未発達なものが数多く知られ、それらの和名に「メクラ」を付けるのは一般的である (爬虫類ではメクラトカゲの仲間がいる)。

 その他に、

差別用語 – Wikipedia

を参考に、差別用語に該当すると思われる語句で検索をかけた結果、以下のようなものが見つかった。

Lonchopteridae ヤリバエ科 Lonchoptera stackelbergi クモスケヤリバエ (雲助)

Melandryidae ナガクチキムシ科 Bonzicus hypocrita ボウズナガクチキ (坊主)

Halictidae コハナバチ科 Lasioglossum pumilum コビトチビコハナバチ (小人・チビ)

 これに加えて、「チビ」や「シナ(支那)」を含む和名が数多くある。

 私自身は、これらの和名を学会発表で使用することに問題はないと思うし、改名する必要も無い (2007年に魚類学会が目名や科名にも使われてきたメクラウナギの呼称を変更したことがある)と考えるが、学会大会の発表要綱に明示されている場合は、従うべきである。もっとも、私の対象種は差別用語を含んだ和名でないので、私には直接は関係のない話だ。

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