グアム生物観察記 [2日目]

家族とグアムに4泊5日で行ってきた。私にとっては旅行≒野外調査なのであるが、今回は普通の家族旅行である。そこで見たり聞いたりした生物情報を記す。「グアム生物観察記 [1日目]」の続きである。

・2日目

 この日は朝から家族全員で近くのプライベートビーチへ行った。オプショナルツアーとか何とか言うやつである。私は旅行の申し込みに関わっていないのでとりあえず昼間は家族の決めたプランで行動するしかない。しかし海、海である。一般に、海洋島で見られる高等動物の在来種と言えば、哺乳類はコウモリ、爬虫類はウミガメとウミヘビである。コウモリにはあまり興味が無いが、ウミヘビにはある。私は過去に西表島でウミヘビが泳いでいるところを見たことがあるが、その姿は実に美しく、適度な恐怖と共に私の心を捉えた。なのでグアムで海に入るならウミヘビ探しだと決めていた私は勇んで海へ入った。が、遠浅、私が来たビーチはあまりにも遠浅であった。遠浅だとウミヘビ自体にとってどうなのかは分からないが、少なくとも監視員にすぐ見つかってしまいそうな気がする。というのも、このプライベートビーチ、金を取っているだけあってスタッフの数が尋常ではないのだ。ちゃんと監視員が水上スキーで巡回して監視しており、客が沖の白波にさらわれたりしないよう、しっかり見守っているのだ。ウミヘビというのは陸生のヘビに比べて含毒率が高い(と私は思っている)ので、きっと危険生物扱いになるだろう。となると、ウミヘビが自分たちのエリアにいると監視員が気づいた場合、その排除か遊泳禁止という措置が取られるはずで、私が海に入ってウミヘビと出会うのは難しくなる。というわけで、結局ウミヘビは見つからなかった。ちなみに、そのビーチで数が多かったのはナマコである。ビーチに設置された看板によるとクロナマコという種類らしいが、そのナマコが恐ろしいほどいる。1平方メートルのプロットを張ったら、その中に1匹はほぼ必ずいる。平均だと2匹ぐらい。サイズは割りと大き目の人糞くらいだ。あと熱帯魚は色とりどりなのが十分にいたので海はそれなりに楽しめた。

 その後、泳ぐのに飽きた私は砂浜の探索を始めた。砂浜に近くにもちょっとした茂みがあり、そこで蝶2種類、トカゲ1種類の写真を撮ることができた。さらに、茂み付近の砂浜で私は不思議な穴を発見した。穴のサイズはものによって多少異なるが、大きいものでソフトボールくらいのサイズである。掻き出された砂が穴の前に積もっており、どうやら潮が満ちても水没しない辺りに穴を掘っているらしいと分かる。しかし一体どんな生物が掘った穴なのだろうか。分からないときはとりあえず掘ってみるに限る。当然、私は作業用の手袋をビーチにも持ってきているので、それを装着して掘り始めた(これは後に危険な行為だったと判明する)。ところが、掘っても掘っても穴の主は出てこない。穴はどれも螺旋状に下へと続いているのであるが、行き止まりと思えるところまで掘り進んでも穴は空っぽなのである。全部で5つか6つの穴を崩してみたが、結果はどれも同じ、成果無しであった。仕方ないので、一旦諦めて昼飯を食べることにした。

 昼飯は自由にとって食べる形式であったが、そのメニューはライス、カレー、フライドチキン、サラダ、という極単純なものであった。さすがアメリカ領、山盛りのフライドチキンは圧巻であった。さて、そのフライドチキンをちまちまビーチのテーブルで食べていると、「チキン美味しい?」とビーチのスタッフが話しかけてきた。台詞の表記が日本語なのは、そのスタッフが日本人だからである。私は「ええまぁ」と答えて軽く流そうと思ったのだが、そうだあの謎の穴について聞いてみよう、と思い、「すみません、ちょいとお聞きしたいんですが、あっちの砂浜になんか穴空いてますよね。あれって何なんですか?」と聞いてみた。すると、「ああ、あれね。多分ヤシガニだよ。食べると美味しいんだよ」という答えが返ってきた。そうかヤシガニか。ならばあの穴の大きさや数に納得がいく。穴の主として爬虫類的なものも候補に入れていたのであるが、穴のサイズと存在密度からして、Predatorであるとは考えにくかったのだ。それにしても、このスタッフさん、食べることに関して随分とご関心があるようで……。その後も幾つか慎重に(大きなヤシガニの鋏でやられると出血もありうるので)穴を掘ってみたが、やはり見つからず。ただし、茂みの中で極小型の、野球のボールくらいなヤシガニを見つけ、写真を撮ることが出来た。

 とんで夜。家族が眠りについた後、またもや深夜徘徊へと出かけた。昨晩進んだ方向と反対側にある小高い丘を目指す。ホテルの塀にはヤモリが多数おり、ライトで照らすとすばやく逃げた。種類は分からないが、common house gecko ことホオグロヤモリと似ている気はする。ホオグロヤモリも広範囲に移入している種だ。丘の上にはGuam Behavioral Health and Wellness Centerとかいう施設があった。日本で言う保健所みたいなものだろうか。坂を上る途中、恐ろしい唸り声(息を吸い込むときの凄みが半端ない)を出す犬が道沿いの家に飼われており多少びびったが、道まで出てくることはできないようだ。昨晩の徘徊帰りに私を追ってきた犬(中型2頭)は、道路と家を区切る柵を潜り抜けて追ってきたため肝を冷やしたが、いくら咆哮が恐ろしかろうとも追ってこられなければどうということはない。さて、坂はそのGuam Behavioral Health and Wellness Centerまでで行き止まりであったため、引き返すことにしたのだが、道路の反対側の歩道を通っていると、道の脇に立派な茂みがあるのを見つけた。樹高3m位の樹木も生えていていい感じである。と、足元の茂みを照らしていると何かが動いた。跳ねている。昆虫か?いや、これはカエルだ。足を一歩踏み入れると、その付近に潜んでいたのが4~5匹一斉に跳ねる。が、見えない。地面は草本の葉で覆われており、カエルの姿が見えないのだ。かろうじて、稀にその葉っぱの隙間にカエルが見えるのだが、それも一瞬、ジャンプを繰り返し安全な茂みの奥まで逃げてしまう。て、手ごわい……。情けないが、結局カエルを捕まえることも、写真に撮ることもできなかった。葉っぱの上でのほほんとしているアマガエルとは次元が違う。Ninjaのようなカエルだった。ちなみに色は黒で、私が見たのはどれも2~3cm程度と小さな個体だった。この日は疲れたので、これで帰ることにした。まだグアムでの日程は2晩あるからいいや、そんな風に考えていた。

→「グアム生物観察記 [3日目]」へ続く

(写真は近日中にArtCreatureの方に掲載します)

Post a Comment

Your email is never published nor shared.