ただのネタだというなら構わないのですが

 『とある魔術の禁書目録 9』を読み終えました。なんかアニメ2期も決まったらしいので、読むスピードをアップしていきたいなと思いますが、なにせ授業中にしか読み進めていないので、結局今ぐらいの進度を保つのが精一杯かなとも思います。

 ところで、『とある魔術の禁書目録』という作品は魔法モノ、というよりはどちらかというと宗教モノです。それも主にキリスト教(作品中では「十字教」と書かれる)主体なので、文中に聖書本文や聖書の記述に関係する表現が数多く出てきます。しかし、聖書の内容をそれなりに知っている私としては、この小説中で用いられる誤った聖書に関する記述に気付いてしまうので、違和感というか引っかかりというか、残念に思うことも多々あります。
 その中でも、9巻で発見した記述はちょっと度を超しているかなと思ったので、この場で指摘しておきたいと思います。

(『とある魔術の禁書目録 9』鎌池和馬 著 アスキー・メディアワークス 発行 三十三版 P. 299の11,12行より引用開始)
 かつて十二使徒の一人であるパウロは、女性の長い髪を禁じ、短く切ったり帽子の中に収める事をシスターに強要した。
(引用終わり)

 聖書を読んだことが無いと、さらっと読み過ごしてしまう記述ですが、ある程度ギリシャ語聖書を知っている人であれば、この記述がどんな聖句を元にしているかはまず分かるはずです。

「同様に女も、よく整えられた服装をし、慎みと健全な思いとをもって身を飾り、髪のいろいろな編み方、また金や非常に高価な衣装などではなく、神をあがめると言い表す女にふさわしい仕方で、すなわち良い業によって身を飾るように望みます。」ーテモテ第一2:9,10

似たような成句がペテロ第一3:3にもあります。
 これを読むと分かると思いますが、パウロはなにも女性の長い髪を禁じてはいません。見た目の美しさに過度な金銭や時間をかけるのではなく、行状によって身を飾るように指示しているのです。なので、「女性の長い髪を禁じた」「シスターに強要した」といった表現は誤りであると考えられます。付け加えるなら、シスター(修道女)と呼ばれるような人々が現れた時代にパウロが生きていたのかも疑問です。
 ただ、実はキリスト教世界には、聖典である聖書以外にも様々な伝承というものが存在していて、そういったものの中に、小説中の記述を裏付けるような記録があるのかもしれません。ただそれらは信頼性が低く、キリスト教世界の共通認識の基盤とはなっていません。
 というわけで、パウロの言動に関する小説中の記述が間違っている可能性が高いことが分かったと思います。ですが、それ以上に問題なのは、

「パウロは十二使徒ではない」

ということです。パウロはイエスの死後に弟子となったので、十二使徒ではありません。ただし、使徒ではあります。これはおそらくキリスト教世界の共通認識であると言って間違いないでしょう。だって十二使徒に関しては聖書にはっきり書いてありますから。

 まぁこういった間違った記述というのは探せば幾らでもあります。別にライトノベルだからというわけでもありません。普通にキリスト教世界の御偉いさんが書いたとされるような書物にも、聖書に基づいていなかったり、間違った解釈をしているものは沢山あります。なので、あまり原典を知らずに読む方は、何でもかんでも鵜呑みにしないように気をつけた方がいいと思うわけであります。

Post a Comment

Your email is never published nor shared.