ちょっと前の話を書く。

 「暑いな……」
 炎天下を歩いていた。
 住宅街の間を流れる水路横の道路はたいそう日当たりが良かった。
 逆に言うと、影が無かった。
 若い木本が等間隔に立ってはいるが、木漏れ日というにはあまりにも豪快な日射である。
 しかし、今向かっている場所へ通じていることは確かそうであった。
 遮るものの無い道の先には、目的とする建物がしっかりと見えていた。
 というより、これ以外の道があるのかも分からない。なにせ、初めて行く所なのである。
 印刷したGoogle Mapと方位磁石を片手に進んでいるのだ。
 「暑い‥…」
 こう呟くことに意味は無いと知りつつ、ついつい口にしてしまう。
 もうすぐお盆の時期。
 夏真っ盛りである。
 私はカバンからタオルを取り出し、額と首まわりの汗を拭った。
 その時、後ろを歩いていた母が私に向かってこう言った。

 「○○も大人になったんだから、そんな雑巾みたいなタオルで顔を拭くんじゃないの!」

 「むぅ……」
 確かに、私が手にしていたのは、飾り気の無いタオルである。
 お洒落な家庭なら、洗面所のお手拭きタオルにも使わなそうな代物だ。
 だが、「雑巾みたい」とはあまりにヒドい表現である。

ーーー

 と、いうようなことがあったのだが、その時私は、小学生時分の頃の事を思い出していた。

 私の父は夏の時期、短パンにTシャツ、それに首にタオルをかけてよく出歩いていた。そのタオルというのはもちろん、私が汗を拭うのに使ったようなやつで、正直全体的にみすぼらしい。100年立ってもこのスタイルがお洒落と呼ばれる時代は来ないだろう、という感じである。そんな父親に対し、母親はよく「そんな恰好でお店に入らないでっ!」と言っていた。もちろん高級なフレンチを出す店に入る訳ではない。その辺のスーパーマーケットとか、ホームセンターである。それでも、その光景を観ていた私は、「ああ、あれはみっともない恰好なんだ」と理解し、恥ずかしく思ったものだ。

 時が経って……

 今では私がおじさんスタイル

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