「いなか、の、じけん」を読んで調べた言葉

夢野久作 著の「いなか、の、じけん」という作品を青空文庫で読んだ。さくさく読めて面白かったが、初出が1927年から1930年頃のものなので、現代ではまず目にしない単語もいっぱい出てくる。以下に私が読んで分からなかった言葉を挙げる。

本作のテキスト入力、校正、及び公開に関わった皆様へ、感謝を申し上げたい。

・虚空蔵
「あの夫婦は虚空蔵さまの生れがわり……」
虚空蔵菩薩という菩薩の一種のことらしい。作中では仏教とは関係なく、駄洒落としてこの名前が出てくる。

・桃割れ
どちらも都の者らしく、男は学生式のオールバックで、女は下町風の桃割れに結っていた。
何となく桃が割れたような髪型なんだろうな、という予想はついたが、画像検索をしてみないと正しいものはイメージできない。

・信玄袋
口をアングリとあけて呆然となったが、やがて震える手で傍の大きな信玄袋の口を拡げて、生命よりも大切そうに人形を抱え上げて落し込んだ。
巾着袋をイメージしていたのは間違っていなかったが、信玄袋とは厚紙などで底面の形成してあるものを言うようだ。

・白首街
「……えエッ。口惜しいッ。おおかた大浜(白首街)のアンチキショウの処へ持って行く金じゃったろ。畜生畜生……二人で夜の眼を寝ずに働いた養蚕の売り上げをば……いつまでも渡らぬと思うておったれば……エエッ……クヤシイ、クヤシイ」
文脈から、今で言うソープ街みたいなものだろうと思ったが、それで合ってた。

・チョンガレ
海岸沿いの国有防風林の松原の中に、托鉢坊主とチョンガレ夫婦とが、向い合わせの蒲鉾小舎を作って住んでいた。
一番謎だった言葉。江戸時代に流行したある種の芸のことらしい。

・猫イラズ
しかもそのチョンガレの頭蓋骨が掘り出されると、噛み締めた白い歯が自然と開いて、中から使いさしの猫イラズのチューブがコロガリ出たので皆ゾッとさせられた。
よく考えれば殺鼠剤のことであると分かったはずなのであるが、よく考えていなかったので猫を駆除するためのものかと思ってしまった。

・撃剣
夏になるとその辺で、撃剣の稽古を済ました青年たちが、歌を唄ったり、湯の中で騒ぎまわったりする声が、毎晩のように田圃越しの本村まで聞こえた。
「剣撃」という単語はたまに出てくるが、「撃剣」は初めて目にした。歴史背景などなかなか面白い。

・平気の平左
奥から出て来た後家さんは、浴衣を両方の肩へまくり上げて、黒光りする右の手でランプを……左手に団扇を持っていたが、上り框に仁王立ちに突立ったまま、平気の平左で三人の青年を見下した。
音の感じからして洒落言葉だろうと思ったが、その通りだった。

・血の道
その石を大切に祭れば、お前の女房の血の道は一と月経たぬうちに癒る。
文脈からして婦人病の一種であろうと思ったが、その通りであった。

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