Kaveriでメモリ速度とBIOSバージョンが7zベンチに与える影響

*環境*

APU: AMD 7850K
メモリ: ADATA AX3U2133W4G10-DR
マザーボード: ASRock FM2A88X-ITX+
ソフト: 7-Zip 9.20
OS: Linux Mint 15 64bit版

結果にあまり影響が無いと思われる他の構成については割愛するが、各試行間で差異は無い。Linux Mintは初期インストール状態からupdate&upgradeを施し、cinnamonがCPUを占有しないように、AMDのグラフィックドライバを導入した環境で行っている。ベンチマークの実行に当たっては、再起動を繰り返すことになるが、結果に示すBIOSのバージョン変更とメモリの動作周波数設定以外、その間にソフトウェアのアップデートや追加のインストールは行わず、設定の変更も加えなかった。

以下に示す結果は、BIOSのバージョンと、BIOSでメモリの周波数設定を変更した際における、7-Zipのベンチマーク結果である。

7-ZIPはデフォルト(# 7zr b)で圧縮/展開それぞれ4回の試行を行い平均の結果を出すが、今回はさらにそれを5回行い、20試行分の平均を出している。

*表記例*

CPU,Memory Frequency(MHz),Single channel(S) or Dual channel(D), BIOS version
[Compressing]
CPU usage, Rating MIPS
[Decompressing]
CPU usage, Rating MIPS

*結果一覧*

7850K,1333,D,P1.50
[Compressing]
370.8,9634.2
[Decompressing]
394.4,11433.2

7850K,1600,D,P1.50
[Compressing]
381.4,7317.6
[Decompressing]
394.2,10883.8

7850K,2133,D, P1.50
[Compressing]
380.2,7707
[Decompressing]
373.0,11132.8

7850K,1333,S, P2.10
[Compressing]
365.8,9537.8
[Decompressing]
395.2,11559

7850K,800,D, P2.10
[Compressing]
370.8,9634.2
[Decompressing]
394.4,11433.2

7850K,1333,D, P2.10
[Compressing]
356,10480
[Decompressing]
394.4,11555

7850K,1600,D, P2.10
[Compressing]
346,10252.4
[Decompressing]
395.6,11613

7850K,2133,D, P2.10
[Compressing]
338.8,10774.4
[Decompressing]
396.8, 11643.8

*考察*

まず、メモリ周波数に対するベンチマーク結果の変化を見る。
不思議なのは、BIOS P1.50の結果で、圧縮/展開いずれの結果も、メモリ速度に対して
1333 > 2133 > 1600
の順で値が高かったことだ。またBISOがP2.10の場合でも、展開についてメモリ速度の違う試行間ではほぼ差異が無いが、圧縮については、
2133 > 1333 > 1600 > 800 > 1333(Single)
となっている。
どうも、今回の構成においては、1600MHz設定があまり良い結果をもたらさないらしい。
ちなみに上記の結果では、圧縮時のCPU使用率が、概ね2133 < … < 1333(Single)となっている。

P2.10の状態が正常であると仮定して、Kaveriに対して高速メモリを使った際の7-ZIPの圧縮速度は、
1333MHzに対し2133MHzが約2.8%上昇、1600MHzに対し2133MHzが約5.1%上昇 (上記の1600MHz設定時の結果を参照)している。

次に、BIOSのバージョンに対するベンチマーク結果の変化を見る。
比較できる組み合わせは、いずれもデュアルチャネルで、2133,1600,1333の時があるが、上記の結果を並べ替えてみると、

7850K,1333,D,P1.50
[Compressing]
370.8,9634.2
[Decompressing]
394.4,11433.2

7850K,1333,D, P2.10
[Compressing]
356,10480
[Decompressing]
394.4,11555

7850K,1600,D,P1.50
[Compressing]
381.4,7317.6
[Decompressing]
394.2,10883.8

7850K,1600,D, P2.10
[Compressing]
346,10252.4
[Decompressing]
395.6,11613

7850K,2133,D, P1.50
[Compressing]
380.2,7707
[Decompressing]
373.0,11132.8

7850K,2133,D, P2.10
[Compressing]
338.8,10774.4
[Decompressing]
396.8, 11643.8

となっており、いずれの組み合わせでも、BIOS P1.50の時に比べ、P2.10で結果の値が圧縮/展開が共に上昇している。
特に2133MHzにおける圧縮速度は、P2.10の時がP1.50の時に比べ、39.8%も値が上昇している。

*まとめ*

今回の構成において、メモリ周波数(の設定)あるいはBIOSのバージョンは、7-Zipのベンチマーク結果に影響を与えている!

*参考1*

国内でベンチマークを行ったサイト(「kaveri ベンチ」でgoogle検索、個人サイトなど除く)における、BIOS情報の表記に関するレビューをしてみる。なお、BIOSのアップデートの有る無し情報は、この記事を執筆している時点での話である。

【レビュー】アーキテクチャを刷新した「A10-7850K」ベンチマークレポート – PC Watch
→BIOSバージョン表記あり。以降に性能向上を示唆するBIOSアップデート無

AMDの新世代APU「Kaveri」はどれだけ速い? 3D性能と消費電力に迫る「A10-7850K」レビュー前編 (4game)
→BIOSバージョン表記あり。以降に性能向上を示唆するBIOSアップデート無

最高性能APUを更新:“Kaveri”の実力は? 「A10-7850K」を速攻でチェック!! (1/2) – ITmedia PC USER
→テスト環境のBIOSバージョンを表記せず

「Kaveri」採用の新APU「A10-7850K」速報レビュー! | ドスパラ – 製品レビュー
→テスト環境のBIOSバージョンを表記せず

新APU『A10-7850K』の内蔵GPUは現役最強クラスだった (週アス Plus)
→テスト環境のBIOSバージョンを表記せず

ASCII.jp:大幅刷新された“Kaveri”「A10-7850K」はなにが変わった? (1/4)|最新パーツ性能チェック
→テスト環境のBIOSバージョンを表記せず

ちなみに私が買ったASRock FM2A88X-ITX+は、2014/01/22に通販で購入したが、その個体のBIOSバージョンはP1.50であった。そしてASRockのFM2+対応マザーは概ね2014/01/09に”Improve APU performance.”と説明されたBIOSがリリースされている。FM2A88X-ITX+の場合は、その”Improve APU performance.”なBIOSはP1.90であり、今回私が検証に使ったP1.50とP2.10は、性能に関わる変更をまたいだBIOSバージョンであると言える。このことから何が言えるかというと、Kaveriの発売日である2014/01/14には、少なくともASRockの場合はAPUの性能に関わるBIOSの更新が既にリリースされていたのだが、出回っている製品には必ずしもそれが工場出荷状態でインストールされていなかった可能性がある、ということだ。FM2A88X-ITX+はBIOS P1.50からKaveriに対応しているので、P1.50やP1.60でもKaveriを使ったベンチマークを行うことは可能である(cTDPなど一部の機能は使えなかっただろう)。よって、上に挙げたベンチマーク掲載サイトのうち、BIOSのバージョンを表記しておらず、なおかつASRock製のマザーを使用していた下3つのページが示している結果については、性能向上が見込めるBIOSのバージョンを使用していたのかどうかが不明であり、他のCPUと性能を比較するのに適したデータであるとは言えないと考えられる。

踏み込んだ言い方をすれば、BIOSのバージョンや、テスト環境のスペック表に書かない設定をいじることで、ある程度意図的に結果を操作することも可能、というわけだ。今回の私の結果も、構成パーツの全てを記したわけではないし、BIOSの設定値も記してはいない。またBIOSの設定がきちんと反映されているのか、テストして調べたわけでもない。ベンチマークの結果そのものについても、きちんと分散を求めて統計解析にかけてもいない。だから私のベンチマークも完璧なものではないのだ。しかし、以上の結果から、少なくとも他人が公開したベンチマークを見る場合に、どういったことを考慮に入れるべきか、一部示すことはできたと思う。

*参考2*

他の環境における7-Zipベンチの結果(マザーボードも異なるので、BIOS情報は割愛)

FX-8350,1033,D
[Compressing]
682.6,20751.4
[Decompressing]
788,23043.8

Phenom x4 945,800,D
[Compressing]
354.8,8883
[Decompressing]
393.4,11020.2

理論値的なもの(?)は、
7-Zip LZMA Benchmark
に主なCPUの一覧が載せられている。

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