悪いことをしてしまった

 以前、知り合いのお宅に呼ばれて食事をしたときの話。私は普段、紙パックで158円/Lの濃縮還元100%ジュースを飲んでいるが、他人の家に招かれた時や、自宅で食事会を開く時は、瓶入りで1Lが300円から800円程度のちょっと高級なストレートジュースを用意することが多い。その日も300円の”りんごジュース”と500円の”ぶどうジュース”、合わせて2本を持って行った。大した出費ではないが、よほどの富裕層で無い限り常飲しているという人は少ないので、ちょっといいものということで喜んでもらえることが多い。

 私を含め5名の大人が招待されていた。皆それぞれ、資力に応じて食べ物や飲み物を持参していて、私もジュース以外に食材を持ってきていた。招待してくれた家族は夫婦と子供3人という構成で、子供たちは一番上が中学生、下は小学校低学年という年齢層だ。楽しく食事が進んでいる中、私は持ってきたジュースを取り出した。大人の中にはビールを飲んでいる人もいたが、車を運転してきた人は酒を飲めないので、ジュースは喜ばれた。ところが、子供たちの母親はなぜか、私の買ってきたジュースを飲んだ上で、自分の子供たちにそれを飲まそうとしなかった。子供に甘い飲み物を飲ませないと決めている家庭もあるが、過去に私はその家庭で糖分たっぷりの飲み物が子供たちに供されたのを見たことがあるので、それが理由ではない。味が悪かったとか、質が悪いとか判断したとも考えにくい。ならばどうして母親は子供たちにジュースを飲ませないようにしたのか。

 少し考えて、私は「しまった!」と思った。おそらくその母親は、子供たちにあまり高級なジュースの味を覚えさせたくなかったのだろう。子供3人を育てていてあまり裕福ではない家族である。中学生ならともかく、小学校低学年の子供であれば、普段よりいいものを飲み食いした結果、家庭で出されるものに不満を持ってそれを顕にするようになる可能性がある。そうなったら親は困る。困るし悲しい気分になるだろう。人の家に持っていくものだからなるべく良いものを、と考えた私の動機は悪くなかったと思うのだが、配慮が足りなかったかも知れない。

 子供は親の監督下にあるので、一緒に遊んだり何か物をあげたりする場合、きちんと親の承諾を取ることが重要である。いろいろな家庭があるので、「うちの可愛い息子に山で虫捕りさせるなんて何事だ!」と怒られる可能性だってあるし、これくらい普通だと思って渡した本が、「上品に育てたうちの娘にはとても読ませられない低俗な本だ!」と判断させる可能性だってある。今回はそこまで大きな問題とはならなかったし、私も相手も嫌な気分になったわけではないのでよかったが、これからより気をつけたいと思う出来事だった。

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