「Fate/Zero」の文庫本を3巻まで読み終えた。3巻は聖杯問答の場面で終わるので、アニメの1stシーズンの内容は4巻の頭まで入っていることになる。この作品は文庫本だと6冊まであるので私は半分を読んだことになるのだが、とりあえずここまでを通して思ったのは、文体が難しいわりに読みやすいということ。正直、私には読めない漢字、意味の分からない熟語、それなりに出てくる。過去にそれなりの小説を読んできた大学院生として、この作品の表現は難しい、と断言できる。ところが、じゃぁ読みにくいかと問われれば、そんなことは無いと答えるだろう。確かに、考えながら読まないと行けないところはあるのだが、そこで思考が行き詰まってしまうことが少ないのである。簡単に言うと、内容が合理的であるため、引っかかりがあまりない。登場人物の思考、行動が納得のいく仕方で動き、説明されているため、すんなり受け入れられるということだ。あと付け加えるなら、その読めない漢字、意味を予想しないといけない熟語、これらについても、嫌らしさというのが感じられない。他の作品を読んでいると、「あぁ、この作家さん、この言葉好きだな」とか、「おいおい、無理して難しい言葉使ってんじゃねぇよ」と思うことがある。前者はあまり一般的でないある同一の表現が不自然なほど作品中で用いられる場合、後者については局所的に難解な表現を差し挟んでいるとき、に感じる。しかし「Fate/Zero」のこれまで読んだ部分について言えば、全体的に文体のバランスがとれているし、その度合いは世界観とも適合している。ここまで豊かな表現を使いつつ、「流れ」をしっかりさせているという点で、この作品の筆者は尊敬に値する、と思う。
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