Illusion

自分はもうダメかも知れない、と思った話。

確か先週土曜日のことである。私は近所のスーパーに向かうべく自転車を漕いでいた。その道はスーパーマーケットが多数存在する通りなのであるが、その中で私が普段行く店というのは2店しかない。そのうちの下宿から遠い方、フレスコに向かっていた。時間は夕方、ちょうど暗くなりかけの頃だった。その日は予定が詰まっていたため割と急いでいたのだが、ふと、前方右側、道路と反対側の方を見て私は驚いた。30代くらいの男性がとあるスーパーの軒先に立っていたのであるが、その手には鎖が握られ、そしてその鎖の反対側に繋がれているのは、なんと同じく店の軒先でうずくまった”子ども”であった。

「まさか! 深夜でもないのに、こんな人通りの多い場所で幼女とお散歩プレイだと!?」

嘘だと思うかも知れないが、この時私は確かに、そう確かに一瞬ではあるが、そう思ってしまったのだ。だがしかし、現実にそんなことがあろうはずもなく、通り過ぎる際に横目で確認したところ、人間の子どもに見えたのは、実は大きめの犬だった。

……ただし服を着せられた、犬だった。ここで私の思考がそこまで異常なものではないということを示すために、その犬については詳しく説明したい。その犬は単に胴体を被う布を装着していただけではない、何か頭巾のようなもので頭を被ってもいたのだ。詳しくは覚えていないが、鮮やかな色だったと思う。しかも、犬は私の進行方向と同じ方を向いていた。つまり、私には背中側しか見えなかったのである。想像してみて欲しい。服を着せられ、頭にも被りものを装着した犬が、背中を向けてお座りしているのである。しかも時刻は夕方、薄暗いときである。

「そ、そうだよね、うんうん、人間の子どもに間違えたって不思議じゃないよね? ねっ? ほーら、でしょでしょ?」

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