私はお前の出身校が格下だという理由で反対意見を述べているのではない

 単純に、その意見が間違っていると思うから、反論しているのである。

 先日、とある活動を一緒にしている少し年上の方 (Hさん)と軽く電話で揉めた。あることないこと色々言ってきたが、要約すると、私の態度が気に入らないということであった。Hさんは、私からすると合理的でない思考によって、私や他の仲間の仕事を増やそうとしてきたので、私が理由を含めた反対意見を述べて止めさせたのである。ちなみにこの活動というのは、半分ボランティアみたいなものであり、Hさんは私にとって雇い主というわけではない。

 このHさんが夜中に1時間以上も電話で文句を言ってきたので随分と辟易したが、電話を切ってからHさんの言葉を反芻してみると、どうもHさんは学歴コンプレックスをこじらせているように思われた。

 Hさんは東京にある一流の私大を卒業している。一流というのは皮肉でも何でもなく、世間一般で本当に一流とされている (学部によってレベルに大きな差があるが、それはどこの総合大学も同じ)。ただし私大の中の一流である。

 一方の私は、こんなことを書くのは恥ずかしいが、世間で一流とされている国立大学の学部、院の修士を卒業している。入学の難易度はHさんの出た大学より高い。

 どうやらHさんはそのことが気にくわないようだった。Hさんと行っている活動に参加している人々というのは、高学歴の人が少なく、大学を出ていない人の方が多いと思われる。だから私よりその活動経験が長いHさんは、このグループの中ではインテリ派に属していた。そこに自分より高学歴な私が現れ、しかもHさんの意見を面と向かって否定したので、イライラしているのではなかろうか。

 確かに私には、世間で評価の高い大学で学んだという事実に関連するプライドがある。しかしだからといって、自分より学歴が低い人の意見を軽視しているということは無いつもりである。私には、大学を出ていなくても凄く頭の切れる知人が何人もいるし、逆に自分と同じ大学に所属していても、理解力や思考力の点で残念な人を数多く知っている。そもそも大学受験には、ある程度確率的に合否が決定する側面があるし、様々な事情で必ずしも自分の学力で入れる最もレベルの高い大学に行けるとは限らないので、出身校で頭の良さを判断するというのは明らかにナンセンスである。

 自分にとってあまり重要でない事項に関する判断を効率的に行うため、便宜的に発言者の学歴を考慮に入れる場合というのは勿論あるが、それが重要な意思決定であれば、誰が言った意見であろうとも、それについて自分自身でよく考えた上で判断する必要がある。情報を取捨選択し短時間でより正しい選択肢にたどり着くことこそ、頭の良さが試される。

 だから私は人の意見に疑問を投げかけるとき、特に強い言葉で否定するときには、その理由を相手にも分かる言葉で説明するよう心がけている。これは、科学を志すものであれば、当たり前のことであろう。私が述べた理由が相手に理解してもらえないというのは、私の落ち度であるかも知れないが、もし相手が強い学歴コンプレックスを持っていて、「俺の言うことをあいつが否定するのは、俺より高い学歴を鼻にかけているからだ」などと結論づけてくるとすれば、手に負えない厄介な相手である。

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