制限要素を見極める

 「コンピュータを使えない人に限って『このマシンは動作が遅くて使えない』的なことを言う」というのは私がいつも思っていることである。ある程度知識と経験がある人なら、

 「このマシンはHDDが古いやつだからねぇ。大きなファイルを移動させるには時間かかるなぁ」

 とか、

 「こいつは無線でネット繋いでるから、通信速度は遅くなるよ」

 というように、制限要素が何なのかを理解した発言をする。つまり、今コンピュータにさせている仕事のスピードが遅いように感じられるのは、CPUの処理能力が限界に達しているのか、それともメモリが不足しているのか、あるいは通信規格の限界がボトルネックになっているのか、ちゃんと分かって「このマシンは遅い」と言えるのである。さらにレベルの高いユーザーなら、複数のコンピュータを持っているという状況下において、それぞれのコンピュータがもつ能力を考慮して仕事を割り当てるだろう。だから少し旧型のマシンであったとしても、「こいつは使えない」という発想には至らない。「こいつではこれこれの作業が出来る」という理解になっていくはずだ。

 こういう制限要素を見極める能力というのは、生物学においても重要だ。例えば作物の成長速度を上げたい場合、一番の制限要素が温度なのか、日射量なのか、それとも土壌中の栄養塩なのか、というのは種や環境によって大きく異なる。だからそれを知りたければ比較実験をして確かめなくてはいけない。

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